専門化する市民

 協働の概念が持てはやされている頃、行政は市民の活動を活性化させようと躍起になっていた。

 基本的に行政はジェネラリストの世界である。
 昨日まで市民課でエキスパート職員として働いていた人が翌日から林業課に異動してしまう、体育課にいた人が広報課に異動してしまう、総務課にいた人が商工課に異動してしまうことも常態化している。

 そこには、行政はひとつの分野だけを熟知しているだけでは担えないからである、という理由があるからだ。
 こうしたすべての分野をいろいろと知ること自体は決して悪いことではない。むしろ、複合的に政策を考えなければならないことは多々あるし、それまでの経験を活かすことで新しい行政を創出することも大事だ。
 しかも、その部署が長くなることで業者との癒着も起こりやすくなる……。

 しかし、あまりにも異動が頻繁だと、異動によって生まれるその理念はかなり怪しくなる。

 地方自治体は、国・総務省を頂点とする3層構造から成り立っている。
 総務省の職員や地方自治体の一部の職員には専門性が必要とされてきたが、地方自治体職員の大半は日々業務を支障なくこなすことが求められてきた。

 しかし、社会情勢が複雑化・多様化していく中、行政にも専門性が求められるようになってきた。
 かわって、求められるようになるのは専門家である。

 とはいえ、シンクタンクのような高等な専門知識を有する集団を地方自治体が持つことは難しい。

 そこで、在野の専門家を探し出し、活用していく方策を打ち出すことにした。それが一時期、ブームのように加速したNPOだ。

 NPOは非営利特定法人と訳される。つまり、ノンプロ集団である。
 ノンプロというのは、報酬を得ていない市民のことを指しているが、明らかにNPOはプロ(専門家)集団である。

 NPOを多数生み出し、自治体で活用できる専門家集団を醸成する。
 こうして専門化した市民を行政に参画させていくのである。
 NPOが加速的に増加した背景には、こうした専門家を渇望する行政が旗振り役になっていたことは否めない。

 世間のボランティアブームも後押しして、NPOは大小乱立していくことになった。